研究テーマ
精神疾患を有する人の家族における、ベネフィット・ファインディングに関する研究
慢性疾患などのつらい経験をした時に、人は、そうしたことが自身に起きた理由を理解しようとしたり、その経験に何らかの意味づけをしたりすることが知られています。ベネフィット・ファインディングとは、つらいできごとを経験した人が、その経験に対象しようとする過程を経て、得られたものや学んだこと・ポジティブな変化があったと感じることを指す概念です。困難な体験を意味づけることは、つらい経験を乗り越えるプロセスを促すものであり、病いとともに歩む生き方にも影響を与えるといわれています。私たちの研究室では現在、精神疾患をもつ人の家族のベネフィット・ファインディングに関する研究を行っています。
本研究は科研費の研究助成を受けて行っています。
精神疾患と身体疾患を合併した患者へのシームレスなケアに向けた、精神科病院と身体科病院の看護師間の連携に関する研究
精神疾患を有する人は身体疾患を合併するリスクが高いことが明らかになっていますが、身体疾患の治療を行う医療機関では、精神疾患をもつ人への十分な身体科治療・ケアが提供されにくいことがしばしば報告されています。また、精神科と身体科で診療録や治療計画の共有が難しいなどの連携の難しさについても指摘されています。そこで本研究では、精神疾患と身体合併症をもつ人へのよりよい継続看護を可能にするような、精神科病院と身体科病院の看護師間の連携がどのようなものかを明らかにするための研究を行っています。
本研究はありまこうげん精神医学研究センターの研究助成を受けて行っています。
統合失調症患者の身体組成データの評価と効果的な運動療法に関する研究
本研究は科研費の研究助成を受けて行っています。
これまでに行った主な研究:精神疾患をもつ人々のパーソナル・リカバリーやベネフィット・ファインディングなどの評価に関する研究
24項目版 Recovery Assessment Scale (RAS) (Corrigan et al. 2004)
日本語版RAS( PDF)
- アメリカで開発された、これまでに多くの研究でパーソナル・リカバリーの評価に用いられている尺度です。
- 日本語版尺度は、再テスト信頼性が低い項目も一部ありましたが、信頼性・妥当性は概ね良好でした。
- 日本語版尺度のドメインは、海外の先行研究とはやや異なる部分もありました。
Chiba R, Miyamoto Y, Kawakami N. (2010). Int J Nurs Stud, 47(3), 314-322.
千葉 理恵, 宮本 有紀, 川上 憲人. (2011). 精神科看護, 38(2), 48-54.
Self-Identified Stage of Recovery (SISR) (Andresen et al. 2007)
日本語版SISR( PDF)
- オーストラリアで開発された尺度です。
- 2つのパートにより構成される尺度で、SISR-Aはステージにより、SISR-Bは4つの構成要素により、パーソナル・リカバリーを評価するものです。
- 日本語版尺度は、再テスト信頼性が低い項目も一部ありましたが、SISR-A、SISR-Bともに妥当性は良好でした。
Chiba R, Kawakami N, Miyamoto Y, Andresen R. (2010). Int J Ment Health Nurs, 19(3), 195-202.
千葉 理恵, 宮本 有紀, 川上 憲人. (2011). 精神科看護, 38(2), 48-54.
また、近年は、精神疾患をもつ人々のパーソナル・リカバリーを支援するための研究が多く行われており、支援者などを対象とした、パーソナル・リカバリーへの知識や考え方を評価する研究も増えています。私たちはこれまでに、2種類の日本語版評価尺度を作成しています。
7項目版Recovery Attitude Questionnaire (RAQ) (Borkin et al. 2000)
日本語版RAQ( PDF)
- アメリカで開発された尺度です。
- オリジナル版には先行研究の引用(Anthony, 1993)が教示文として含まれていたため、原著者Borkin先生に相談の上、日本語版にも同じように引用の和訳をつけました。
- 日本語版尺度は、信頼性は不十分でしたが、妥当性は概ね良好でした。
Chiba R, Umeda M, Goto K, Miyamoto Y, Yamaguchi S, Kawakami N. (2016). BMC Psychiatry, 16, 32.
Recovery Knowledge Inventory (RKI) (Bedregal et al. 2006)
日本語版RKI( PDF)
- アメリカで開発された尺度です。
- オリジナル版は20項目版ですが、日本の研究では16項目版が妥当であると考えられました。
- 16項目版は、No.1, 4, 5, 13の4項目を除いたものになります。
- 日本語版尺度は、良好な妥当性と解釈可能な内的整合性がみとめられました。
Chiba R, Umeda M, Goto K, Miyamoto Y, Yamaguchi S, Kawakami N. (2017). Int J Ment Health Syst, 11, 71.
Chiba R, Umeda M, Goto K, Miyamoto Y, Yamaguchi S, Kawakami N. (2017). Int J Ment Health Syst, 12, 34.
Benefit Finding Questionnaire (BFQ) (Chiba et al. 2020)
BFQ( PDF)
- 千葉らが開発した、ベネフィット・ファインディングを評価する21項目の尺度です。
- 信頼性・妥当性は概ね良好でした。
- 中国語版BFQ(BFQ-C)も作成され、優れた信頼性・妥当性が検証されました。
Chiba R, Funakoshi A, Yamazaki Y, Miyamoto Y. (2020). Healthcare, 8(3), 303.
Cao, X., Tian, X., Wen, Y., et al. (2024). PLoS ONE, 19(9), e0291586.
日本語版RAS、日本語版SISR、日本語版RAQ、日本語版RKI、日本語版BFQにはいずれも、研究使用目的の場合には使用許可や使用料は特に必要ありません。発表の際には論文を引用してください。
私たちはさらに、パーソナル・リカバリーの関連要因の検討やリカバリーを促進するための研究などに取り組んでいます。
その他にも、精神看護学に関連する様々な研究テーマで共同研究を行っています。